>>2008.08.31 Update

   

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■2008年(平20年)度遠洋練習航海

 『練習艦隊』とは、海軍(日本の場合は海上自衛隊)の要員訓練のために組織された艦隊のこと。海上自衛隊の場合は、毎年、幹部候補生学校を卒業した海自幹部候補生が乗船して遠洋航海に 向かいます。1957年(昭32年)に第1回の遠洋航海が実施され、以来2007年(平19年)度まで計51回実施されています。

 今回の大阪港に訪れた練習艦隊は、2008年(平20年)度遠洋練習航海に参加するために呉から横須賀に向かう海自練習艦隊。練習艦『かしま』(TV3508)、同『 あさぎり』(TV3516)、護衛艦『うみぎり』(DD158)の3隻。2008年4月15日〜9月18日にかけての159日間の遠洋航海を実施。 アメリカ、パナマ、ブラジル、セネガル、イギリス、オランダ、フランス、エジプト、インド、シンガポールの計10カ国(13寄港地)を訪れる総航程約 57300kmにも及ぶ航海でした。

◆練習艦隊大阪港入港

 呉を出港して一路横須賀に向かう遠洋練習航海に参加する練習艦隊は、大阪港(天保山)と神戸港に1年おきに入港しています。昨年は神戸港だったので、2008年(平20年)度の練習艦隊は大阪港(天保山)に入港となりました。”日本帝国海軍連合艦隊発祥の地”という由緒ある天保山への入港となります。

 入港と同時に、艦艇一般公開も実施されます。なので3月24日(日)に行ってきました。手荷物検査の後に埠頭に入ります。

今回は練習艦隊旗艦の練習艦『かしま』、練習艦『あさぎり』、護衛艦『うみぎり』の3隻が入港。『かしま』と『あさぎり』が並んで東側(陸地より)に、『うみぎり』が単艦で西側(大阪湾より)の位置に係留されていました。一昨年とは違って、艦首を西側つまりは大阪湾方向に向かうような状態で係留されていました。

 写真左が練習艦『かしま』(TV3508)と『あさぎり』(TV3516)、写真右が護衛艦『うみぎり』(DD158)です。『うみぎり』を艦首方向から撮影したかったのですが、撮影ポイントは埠頭の先端付近となり立ち入り禁止区域であったためあきらめました。『あささぎり』と同型艦なのでよしとしますか。

 

 

 天保山と桜島を結ぶ桜島渡船上から撮影した練習艦隊。艦を右斜め後ろから撮影します。左の陸側が『かしま』で右の海側が『あさぎり』。もともと艦種と目的が違う艦なので、大きさなどは違います。練習艦『あさぎり』のヘリ格納庫内には白いプレハブが設けられています。実習室(講義室)だとか。なので『あさぎり』にはヘリの格納はできません。

 

 

 同じく渡船上から撮影した護衛艦『うみぎり』。大きなヘリ格納庫と2本のマスト、シフト配置の煙突が『あさぎり』型護衛艦の特徴。構造物が大きくて多いので護衛艦『たかなみ』型や『むらさめ』型に比べると、どうしてもステルス性に劣ってしまいます。

 ヘリコプター発着甲板上にはSH60Jが搭載(展示)されています。このヘリは遠洋航海にも参加しており、急病人の搬送などにあたるそうです。

 護衛艦の向こうに見えるのが大阪湾を周遊する観光船『サンタマリア』号、横に見えるのが水上警察の巡視船です。

■練習艦『かしま』 (TV3508)

 老朽化した練習艦『かとり』(TV3501)の後継艦として建造され、1995年(平7年)に竣工した練習艦。練習艦専用の艦として誕生している。各国を歴訪することが多い練習艦だけあって、応接室や迎賓設備も完備されている。遠洋航海に従事して世界各国を巡ることもあり、艦橋前の甲板室上には2門の礼砲が装備されているのも練習艦ならではある。

 また『かしま』には、練習艦でありながら76mm単装速射砲と短魚雷発射管を装備している。護衛艦の主要兵装となっているアスロック対潜ロケットやハープーン対艦ミサイルは装備されてはいないが、それらのシミュレーターが装備されており実練することが可能である。

●『かしま』Data

>>基準排水量:4050t/満水排水量:5400t
>>主要寸法:全長143.0m/幅18.0m/深さ12.3m
>>エンジン:ガスタービン2基 ディーゼル2基 2軸 出力:27000PS
>>速力:約25kt
>>乗員:約360名。うち実習生が125名。
>>主要装備:62口径76mm単装速射砲×1 3連装短魚雷発射管×2

>>竣工:1995年(平7年)1月26日/建造:日立舞鶴/所属:練習艦隊直轄/母 港:呉

 今回は3隻とも一般公開が実施されていました。なので昨年に引き続き『かしま』に乗艦することができます。『かしま』後部のヘリ発着甲板→『あさぎり』→『かしま』前部甲板という順序でしたが、ここでは各艦ごとに記載してゆきます。

 

 

 『うみぎり』から見た練習艦2隻。『あさぎり』は元護衛艦を種別変更して練習艦とした艦。なので元から練習艦として建造された『かしま』とは、同じ練習艦と言っても設備などに差があります。『あさぎり』型は現役護衛艦として活躍しているので、即実艦配置となっても対応しやすいという利点があります。

 

 

 『かしま』に乗艦。指定された順序で回ります。後部のヘリ発着甲板に向かうと、まず現れるのが通称”オランダ坂”と呼ばれる坂。中央甲板と後部甲板の間が傾斜構造となっているだけなのですが、足腰を鍛えるために設けたのではなく、船体強度確保の目的から設けられた構造です。

 

 

 後部のヘリ発着甲板。両側にオランダ坂が見えます。ここは訓練甲板も兼ねています。正面の掩体壕のような格納庫中央上にあるのがヘリ管制塔。ヘリは発着できますが、格納することはできません。引き込み式の天幕があり、レセプション会場としても使用されることがあるそうです。

 

 

 『かしま』艦橋。護衛艦などの他艦艇の艦橋と比べると広いスペースがとられています。これは実習生が多数いるためです。ズラリりと並んで、先輩自衛官の動きを見学するわけです。ちなみにこの日の午後からの公開では、見学者激増のため、艦橋の公開は中止されてしまいました。

 

 

 艦内にあった自衛艦命名書と日立造船のプレート。命名書は他の艦では見かけたことがありません。この近くには”かしま神社”と御神体がありますが、失礼になると思い撮影しておりません。

 

 

 ラッタルのところにあった赤絨毯。『かしま』の紋章(?)が描かれています。この絵柄のコースターとかバスタオルがあれば買うのですけどね。各艦艇の絵柄すべてを売り出したら、コレクターさんが買いそうな気が・・・。(^^;)

 『かしま』に搭載されている11m級内火艇。各国を歴訪してVIPを出迎えるため、写真左のような将官接遇クラスの内火艇が搭載されています。写真右は一般の内火艇。差は歴然としています。(;´∀`)

 練習艦ですが『かしま』には76mm単装速射砲、3連装単魚雷発射管などが搭載されています。このときは小雨がパラついていたことや人が多かったので撮影していません。m(_ _)m 『かしま』の兵装は昨年のレポをご覧ください。

 

 

 ラッタルを降りて『かしま』から離艦しました。こちらのラッタルは一般用ではなく”お偉いさん”用です。何たって木の階段ですから。ここを上ると先ほどの赤絨毯があるわけです。陸からVIPを迎える場合などはこちらを使用するのでしょう。このラッタルを下る時だけVIP気分でした。(;´∀`)

■練習艦『あさぎり』 (TV3516)/■護衛艦『うみぎり』 (DD158)

 練習艦『あさぎり』と護衛艦『うみぎり』は、共に『あさぎり』型護衛艦として竣工した。『あさぎり』が ネームシップで1番艦、『うみぎり』は最終の8番艦として1988年(昭63年)と1991年(平3年)に竣工している。

 『あさぎり』型護衛艦は、いわゆる新「八八艦隊構想」の基幹として『はつゆき』型護衛艦12隻に続いて8隻建造された。『あ さぎり』型はヘリコプター搭載護衛艦であり、搭載数は1機だが、格納庫には2機収納可能になっている。そのため巨大な格納庫

が見られるのが『あまぎり』型護衛艦の特徴であり、また欠点(レーダーに捕捉されやすい)でもある。

 なお1番艦でネームシップの『あさぎり』は2005年(平17年)に練習艦に艦種変更されている。(『あさぎり』

DD151→TV3516) その『あさぎり』は練習艦となっても有事の際には短期間で護衛艦に現役復帰できるようになっている。

●『あさぎり』型Data

>>基準排水量:3500t(5番艦の「はまぎり」以降:3550t)/満載排水量:4900t(はまぎり以降:4950t)
>>主要寸法:全長137.0m/幅14.6m/深さ8.8m

>>エンジン:ガスタービン4基2軸 出力:54000PS
>>速力:約30kt
>>乗員:約220名
>>主要装備

  62口径76mm単装速射砲×1 高性能20mm多銃身機関砲(CIWS)×2 アスロックSAM8連装発射機×1 

  短SAMシースパロー8連装発射機×1 ハープーンSSM4連装発射機×2 3連装短魚雷発射管×2
>>ヘリコプター 1機搭載

>>竣工

 『あさぎり』:1988年(昭63年)3月17日/建造:石川播磨東京/所属:練習艦隊第1練習隊/母港:呉/2004年度に練習艦に艦種変更

  (DD151→TV3516)

 『うみぎり』:1991年(平3年)3月12日/建造:石川播磨東京/所属:第4護衛隊群第4護衛隊/母港:呉

◆練習艦『あさぎり』(TV3516)

 

 

 『あさぎり』を真横から撮影した写真。後ろ(岸壁側)に『かしま』がいるのでいろいろと重なっていますが、『あさぎり』型の艦型が分かると思います。

 『あさぎり』型の特徴は、”2本のマスト”、”シフト配置の煙突”、”巨大なヘリ格納庫”。この3点を覚えていれば識別できます。写真では、煙突間に『かしま』の煙突があるので分かりづらいですが、右側に独立した前部煙突と、左側にあるヘリ格納庫と一体となっている後部煙突があるのがわかります。

 

 

 『あさぎり』のヘリ格納庫。練習艦となった『あさぎり』と『やまぎり』のヘリ格納庫内にはプレハブの教室が設置されています。これによりヘリの格納はできなくなっていますが、ヘリ発着甲板への発着は可能なようです。いざという時は、短期間で撤去して護衛艦に復帰することができるとのこと。

 左写真がハープーンSSM発射筒。『あさぎり』型には4連装発射筒が2基装備されています。

 右写真が後部に設置されているシースパロー短SAM8連装発射機。ミサイルの搬入は『あまぎり』では自動化されておらず、

発射機の後ろには搬入用レールなどはありません。海士さんに尋ねたところ、やはり”人力”でミサイルを搬入するそうです。

 

 

 68式3連装短魚雷発射管。イージス艦を含めてすべての護衛艦に搭載されている対潜水艦兵装。”短魚雷”というのは対潜水艦用のホーミング魚雷のことで、国産の73式短魚雷を発射します。ちなみに対艦艇用魚雷は”長魚雷”というのですが、現在は護衛艦には搭載されていません。

 

 

 『かしま』から撮影した『あさぎり』の62口径76mm単装速射砲。完全自動で無人化された砲塔です。中を見せてもらいましたが、本当に人はいませんでした。(当たり前ですが・・・) 砲塔のカバーは鋼ではなく、軽量化をはかるため強化プラスチックか何かだったと思います。

 『あさぎり』は甲板上のみの公開で、艦橋などの艦内へは立ち入ることができませんでした。

◆護衛艦『うみぎり』(DD158)

 

 

 『うみぎり』をやや斜め右後ろから撮影。『あさぎり』と同型艦なので説明は省きます。この写真だと、煙突のシフト配置が分かると思います。なお『うみぎり』は2007年(平19年)7月に一般公開があって乗船しています。そちらのレポもご覧ください。

 

 

 『うみぎり』のヘリコプター格納庫。搭載は1機ですが、格納は2機まで可能です。巨大な格納庫なので、ステルス性では不利となっています。格納庫の屋根(?)に乗っているでかくて白いのは、シースパロー短SAM管制用の射撃指揮装置。”でかい”CIWSではありません。その手前にある小さな白く丸いのがスーパーバード衛星通信アンテナです。

 

 

 『うみぎり』では、シースパロー短SAM発射機のミサイル搬入は自動化されています。搬入用のためのレールが設置されています。『あまぎり』からあとの艦で確認しています。発射機は『あさぎり』で載せているので省略します。

 

 

 76mm単装速射砲の後ろに配置されている、アスロックSUM8連装発射機。対潜水艦用の短魚雷を発射します。『むらさめ』型護衛艦や『たかなみ』型護衛艦などからは垂直発射装置搭載となっているので、この発射機を搭載しているのは『あさぎり』型が最後となります。他に兵装として高性能20mm機関銃CIWSが2基搭載されています。(写真省略)

 

 

 艦橋横から後方の煙突を撮影。シフト配置であることが良く分かります。手前が艦首寄りにある左舷側、ハープーン発射筒の向こうにあるのが艦尾寄りの右舷側の煙突です。

 

 

 『うみぎり』では艦橋内部も公開されていました。『かしま』に比べると狭いです。練習艦となった『あさぎり』では狭く感じるのでしょうか。

 

 

 『うみぎり』に搭載されていたSH60J対潜ヘリ。今回の遠洋航海にも同行するとのこと。主に急病人の搬送が目的だと話してくれました。J型の後継となる対潜水艦ヘリとして、SH60Kが登場していますが、現場ではJ型の方が使いやすいとのことです。

 

 

 『うみぎり』で練習艦隊の艦艇一般公開を一通り終わりました。この日は曇り時々雨というあいにくの天候でしたが、休日の天保山ということもあり、天保山に来た家族づれでにぎわっていました。まぁ、一般の方達には珍しいですからね。

 来年(2009年)3月の練習艦隊は、おそらく神戸港入港となります。『かしま』は参加するとして、残る2隻は何になるのでしょうか。

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