大型二輪免許取得への道

 

『大型二輪免許』

 

以前は『限定解除』と呼ばれていたライダーにとっては憧れのライセンス。

750ccや1100ccの大型バイクに跨って颯爽と走る姿は、

中型免許(現在の普通二輪免許)しか持っていない者から見ると、”うらやましい”限りだった。

以前は警察の免許証センターでしか取得出来ず、3・4回落ちるのは当たり前で10回受けて

ようやく取得できるかどうかという、取得ハードルの高い免許であった。

しかし外圧による規制緩和によって、一般の自動車教習所でも

所定のカリキュラムを受講すれば取得出来るようになった。

 

1996年の免許の改定により、それまでの『限定解除』は『大型二輪免許』、

『中型限定免許』は『普通二輪免許』に変わり、取得する際の年齢制限まで設けられた。

名前が変わっても、取得しやすくなっても、

『大型二輪免許』がライダーの最高峰ライセンスであることに変わりはない。

 

 

 初めに・・・ 

『作り人』が大型二輪免許を取得したのは1999年3月のこと。

大阪府和泉市光明池にある免許証センターで取得してもよかったのですが、

時間が限られていたこともあり”確実”に取得出来る教習所で取得することにしました。

これから教習所などで『大型二輪免許』を取得しようと考えている方、通っている方に

参考になればと思い作ってみました。

 

◇このコーナーには写真はありません。だらだらと文章が続くだけです。

◆教習内容や検定コースなどは各教習所によって違いますので、あくまでも参考にして下さい。

◆メモが残っていたとはいえ、詳細を忘れてしまった出来事もあります。

◇出来る限り思い出して書いていますが、事実と異なることもあり得ます。

◆同じT教習所で大型二輪取得された方で覚えておられる方、間違いがあればご指摘お願いいたします。

零.初めの第一歩

壱.第一段階

弐.第二段階

参.卒業検定

大型二輪免許取得あどばいす

 零.初めの第一歩  

 1993年(平5年)8月に中型免許(当時。現在は普通二輪免許)を取得。1年のブランクを開けて翌94年(平6年)8月よりZRX400に乗り始めた。当時は限定解除を取るためには、警察の運転免許試験所で試験を受けるしか手はなく、大体10回受験してようやく受かればいいところだった。そんな訳で限定解除を受ける気などこれっぽちもないまま時が流れていった。

 1996年(平6年)に免許の区分が改正。それまでの『中型免許』(〜399cc)が『普通二輪免許』に、『限定解除』(400cc〜)が『大型二輪免許』となった。

 その2年後の98年(平10年)4月(?)から、なんと大型二輪免許が一般の教習所でも取得出来るようになった。この頃に一時大型二輪免許を取得しようかという気が起こったが、近くの教習所はまだ体制が整っておらず、『当分普通二輪のままでええわ』とそのままになった。

 しかし98年(平10年)10月、知り合い2人とツーリングに出かけた時のことである。R158の白鳥ループとそれに続くR158ワインディングにおいて、大型バイク(ZRX1100とブラックバード)とZRX400の差を実感。技術面の差という要因が大きかったのだが、大型二輪バイクのパワーに圧倒されてしまった。

 これをきっかけに大型二輪免許を取ることを本気で考えるようになる。幸い98年12月より教習内容が変更され、学科教習がなくなり実技12時間だけとなった。1日3時限までの講習受講が可能となり、最短5日で取得出来ることになった。

 年末年始を挟むので98年12月に申し込んで翌99年1月から大型二輪免許を取ることに決定。仕事の関係から99年2月中に取得することを目標にして1999年を迎えたのである。 

 周囲の連れには『大型二輪免許取るだけ。バイクは400ccでええねん』と話していた。この時はそう思っていた。

 壱.第一段階  

 ◇◆ 99年1月10日(入所式) ◆◇ 

 どこの教習所で受けるか迷ったが、中型免許を取得した大阪府高石市にあるT自動車教習所で取得する事に決める。98年12月中に申し込もうとしたが、年末の忙しさで申し込む暇がなく、翌99年1月6日に早速申し込んだ。

 99年(平11年)1月10日入所式。続いて適性検査を受ける。結果は問題なし。ちなみに私は『開放的で暖かみのある性格』で『考えや行動がその時の気分に左右され相手に思わぬ失言や、やや軽率な振る舞いをしていしまう恐れがある』そうだ。後者は当てはまる。

 入所式の後、教習風景を眺める。車の免許を取って約9年。エンストして進む教習車や緊張してカチコチになってバイクを操るライダーの卵を見ながら、『昔は私もあ〜だった』と昔を思い出していた。

 ◇◆ 99年1月13日(第一段階第1時限目&2時限目) ◆◇ 

 99年1月13日午前9時過ぎZRX400で教習所に到着する。大型二輪コースなので、走って来た格好のままコース中央にある二輪待合い場に向かう。約5年半ぶりに訪れる。教習者は普通二輪が相変わらずHONDAのCB400で、大型二輪はHONDAのCB750である。

 教官は、私が普段からバイクに乗っているということで最小限の説明で終わらせ、後は普通二輪コース受講の人に付きっきりとなった。私は言うと『内周を走っておいて下さい』とのこと。ハンドルを持ってバイクの前後を確認。スタンドを直して乗車。いつもならバイクに跨ってからスタンドを直していたのだが、これは検定一発アウトとなる。普段の乗り方のクセが必ず出てくるはずなので、98年12月末から普段でもクラッチ・ブレーキレバーは4本の指で押さえることにし、出来る限りスタンドも乗車する前に直すようにしていたのだ。

 初めて750cc(いわゆるナナハン)のバイクを跨ぐ。400ccよりも一回り大きい感じがするが、ネイキッドマシンゆえあまり違和感はない。キーを入れてエンジンをスタートさせる。『ドドドドドド・・・』400ccとは全く違うエンジンの振動が伝わってくる。さすが750、パワーが違う。

 後方確認してからスタートさせる。車線に出るが少し走っただけでパワーが違うことに気が付く。Lowから2ndにギアを上げ、400ccのつもりでアクセルを回したらコースアウトしかけてしまった。しばらく走るとLowでならクラッチをつなげたままで何もしないでも進むことが判明。750ccは凄いと感心してしまう。『400とは違うのだよ。400とはぁ〜〜〜』という某大尉の声が聞こえてくる。

 予約の関係で間に1時間挟んで2時限目の教習が始まる。1時限目は内周だけだったが、2時限目からは外周が入る。右折と車線変更が入る。これも普段からやっているので難なくクリア。外周の法廷速度遵守区間(30k/h)では4速までギアを入れて走って見た。スロットル空けすぎで40k/h近く出ていたようだが、400ccのつもりで運転してはいけないということか。

 普段からバイクに乗り慣れているので、何も失敗することなく1・2時限目が終わる。大型バイクってこんな感じかという教習であった。

 ◇◆ 99年1月14日(第一段階第3時限目) ◆◇ 

 教習2日目。3時限目の実技講習である。教習車にタンデムしてコース説明を受ける。今回の課題はL字クランクと8の字カーブである。

 こういう道は3ケタ国道走行でよく走っている。『楽勝〜♪』と鼻歌混じりにコースに出る。教官から『クランクに入る直前でLowに入れてスロットルを開けずに進め』というアドバイスを受けていたので、その通りにしようとする。しかし普段400ccでは、こういう場合はある程度スロットルを開けてしまうのが常。ついついそのクセが出てしまい、クランクの最初のカーブを曲がった所でスロットルを開けてしまった。そのまま2つ目のカーブに入るが、加速がついているために曲がりきれずパイロンを倒し縁石に乗り上げ転倒・・・一瞬何が起こったか分からなかった。

 教習3時限目にして早くも転倒。『こりゃいかん』と気を取り直し、バイクを起こして再トライ。クランクに入ったところでスロットルを開ける衝動を必死に押さえて、LowのままL字クランクを進む。2回目は教習車に転倒防止ガードがあることを忘れていて、それにパイロンを引っ掛けてしまう。教官曰く、『目線を次のカーブの入口にもっていきなさい』 そういや緊張していてつい曲がっているカーブの出口を見てしまった。

 8の字はうまくクリア出来るので、問題はL字クランクのみ。3回目にしてようやくコツが分かりパイロンを倒さずにクリア出来た。4回目以降は問題なくクリア出来るようになった。

 400ccに乗り慣れているからとナメてかかって痛い目に遭った日であった。

 ◇◆ 99年1月20日(第一段階第4時限目&第5時限目) ◆◇ 

 教習3日目。4時限目の実技講習である。今日は2時限連続で今日の2時限目は第一段階の見極めである。

 4時限目から坂道発進が入る。この前のコースに坂道発進が加わっただけ。3ケタ国道の急坂での発進で手慣れているので感じはすぐに分かり、問題なくマスターしクリア出来た。むしろL字クランクの方が問題だった。中6日ほど空いてしまっていたので少し感じを忘れており、最初はかなりぎくしゃくした動きになってしまった。

何回かコースを回るとカンが戻り、難なくクリア出来るようになった。

 つづいて5時限目に入る。4時限目と同じコースを走り、気が付くと見極めは終わっていた。これにて第一段階は終了。次回から第二段階に入る。

 弐.第二段階  

 ◇◆ 99年1月28日(第二段階第1時限目&第2時限目) ◆◇ 

 今日から第二段階に入る。教官に説明を受けた後コースに出る。教官の乗るバイクに続く。坂道を下りると待合室裏にある波状路に入って行く。凸凹した不間隔の波状路を進む。Lowで立ち姿勢で入り、半クラッチとアクセルワークを使って5秒以上で通過する。転けたりはしないのだが、アクセルワークがうまく行かずぎこちなく通過する。最初はこんなものだろう。

 その後スラロームに入る。幅4.5m間隔で設けられた5本のパイロンに接触しないように左右に7秒以内に通過しなくてはならない。転倒防止ガードがあるのでその幅を考えて通過しなくてはならず、離れすぎたら時間がかかり近すぎたらパイロンを倒す。通過するラインを見極めないとちと辛い。

 T教習所ではスラロームの後に一本橋にが来る。検定でもスラローム→一本橋という順序なので、検定を意識して練習できる。一本橋は、長さ15m幅30cm高さ5cmの板の上を10秒以上かけて通過する。中型免許でも苦手な課題だが、中型の時は8秒以上だった気がする。リアブレーキと半クラッチを巧みに使い通過しなくてはならないのだ。750ccバイクで初めてトライする。重心が400ccとは違うし重さも違う。あっさりと橋から落ちてしまった。検定では即検定中止だ。

 『スラロームでは最初は最後のパイロンを最後は遠くを見て行く。』『一本橋でも向こうのマンションの屋上を目印にすればよい』(教習所の西にマンションが建っている)とのアドバイスをもらう。『検定では、10秒を切っても落ちなければ良い。減点されるが検定が中止になるよりはマシ。一本橋の出口付近でふらついたら一気に渡りきった方が良い』とのアドバイスももらう。まぁ、それは他の課題で減点0というのが前提条件だろうけど。

 聞くところでは、過去大型二輪コースではスラロームで5秒を切り、さらに一本橋を18秒で渡った強者がいたそうだ。

 ところで、この日の帰りあたりからZRX400が小さく感じ始めた。集中した日は特に強く感じる。それほど集中しているためだろう。

 ◇◆ 99年2月5日(第二段階第3時限目) ◆◇ 

 この時間の約1/3はカーブでの安全走行に費やされた。教習所の緩いカーブではあるが、20k/hと30k/hで走ってみてバイクがどうなるかというのを実体験するという内容。20k/hではどうもなかったのだが、30k/hだと見事にコースアウトしてしまった。

 残りはコースを走ってばかりであった。踏切も入って来たので徐々に検定コースに近いコースを走るようになった。(急制動はまだ入っていなかったように思う・・・)

 ◇◆ 99年2月9日(第二段階第4時限目) ◆◇ 

 この日に危険回避と急制動が入った。危険回避は教官に向かってバイクを走らせて、教官が上げた旗の方にバイクを待避させるというもの。これは難なくクリアしたのだが、問題は急制動でる。

 急制動は3速で40k/hで走って来てフロント・リア・エンジンブレーキを用いて乾燥時11m、湿潤時14m以内で停車しなくてはならない。T教習所の場合、直線区間があまり長くないので外周道路から急制動のコースに入ってくる段階で3速に入れて40k/hで入る必要がある。

 私はこの『3速で』に引っかかり、ギアを入れることに気を取られてしまい、40k/h以上の速度を出すことがで出来なかった。何度かトライしたが2速で40k/hとか3速でも30k/h以下という状態で急制動していた。

最後辺りでようやく3速40k/hで急制動できるようになったが、完璧とは言えない状態だった。

 卒業検定まであと3時限である。

 ◇◆ 99年2月11日(第二段階第5時限目) ◆◇ 

 この日の課題は『危険を予測した運転』ということで、実車教習ではなくコンピュータを使ったシュミレーション教習であった。ゲームセンターにあるバイクレースのゲーム装置のようなシュミレーション機を使用するのだ。大画面の前に車輪を除いただけのバイクが固定されている。恐らくSUZUKIのバイクの部品を使っているのだろう。

 バイクに跨るとシュミレーションが始まる。シフトチェンジがあり速度とハンドルを向けた方向に合わせて画面が動くようになっている優れモノ。ゲーセンのゲームとはひと味違う。最初は少し戸惑ったが、しばらくすると慣れてくる。かなり街中の様子(人の動きや車の動き等)を再現している。ポリゴンの人や車・バスが動き回るバーチャル空間を走る。

 難なくコースをこなす。しかし街中の交差点での右折で、対向右折車の影から飛び出してきた直進バイクと

衝突し事故ってしまった。教官に『来ると思わなかった?』と聞かれたが、現実なら音や車のガラス越しにでバイクが来るのが分かるが、この疑似体験装置(シュミレーター)はそこまでは再現できないようだ。

 一通りのコースをこなすと、テレビ画面で走ったコースを再現。いろんな角度から見られるので面白い。教習と言うよりはゲームという感じがした実技であった。将来はもっとリアルに再現出来るかもしれない。

  ◇◆ 99年2月18日(第二段階第6時限目) ◆◇ 

 この日の半分の時間は『高度なバランス走行』に費やされた。不当間隔のパイロンの通過、立ち姿勢による走行などをこなす。つらかったのは小回転。直径2mほどの円の幅15cmほどの枠線の上をクルクル回らなくてはならないのだ。教官は2速ぐらいでいとも簡単に回ってみせる。続いて私がトライするがこれが難しい。枠線からすぐにはみ出てしまう。次に同じ円を2つ続けて8の字で回る。教官は軽々とやってのけるが、私はというと全くダメ。枠線から遠くはみ出てしまい、とても同じ所で回れない。しかも途中で焦った拍子に3速に入れてしまい、慌てて2速に落とそうとしたらバランスを崩して転倒・・・今回の教習で2回目の転倒となった。第二段階まで来て転倒である。めちゃ恥ずかしかった。

 残りの時間は検定コースをひたすら走る。検定コースは2種類在るのでどちらが出されても良いように両方回る。この頃になると慣れてきたのか、スラロームをパイロンを倒さずに7秒以内でクリア出来るようになっていた。(最短で5.9秒)だた一本橋は練習では15秒は必要なのだが、練習の段階で11〜12秒となっているので、10秒以下でも橋から落ちないようにすることを徹底することにした。急制動も調子が良く、このまま検定にしてくれと言いたくなった。

 ◇◆ 99年2月19日(第二段階第7時限目) ◆◇ 

 この日は第二段階の見極め。といっても前回と同じく検定コースを回るだけである。一本橋は減点覚悟で10秒以内でも橋から落ちないようにすることにしたが、急制動だけうまくいかない。例の3速40k/hで入るというのが出来ないのである。どうやら加速とギアを入れるタイミングが合わないようだ。これを直さなくてはならない。次回は検定ということもあり、終了時間に近づくにつれて焦り出す。おかげでスラロームもパイロンを倒すなど、信じられないミスを連発してしまった。

 ボロボロの結果となり見極めは落として貰おうと思ったが、教官は一言『じゃ検定がんばって下さい』であった。今日の教官は教習期間中によく当たった教官だったので普段の状態を知っているから通してくれたのだろう。

 こうなりゃ後は実践あるのみ。ついに大型二輪ライダーへの最後の難関に挑む。

 参.卒業検定  

 T教習所の場合、卒業検定の前半に外周コースや法定測道走行、車線変更、踏切などを終わらせる。本文中に検定コースが2つあると書いたが、それは踏切を西から渡るか東から渡るかの違いだけで、後半の内容は同じである。

 後半は、L字クランク→S字コース→坂道発進→波状路→急制動40k/m→スラローム走行→直進狭路台(一本橋の正式名称)→帰着という内容(1999年2月現在)。一番失敗しやすい課題を最後の方に持ってきており、波状路まで減点なしで来たならば、例えば通過時間が規定時間以下でも検定中止にならないようにだけ心がければ良いので気分が楽になる。最初に一本橋が来るよりは最後に来た方が良いに決まっている。その点は考えてくれているなと思う。

 卒業検定は、持ち点100点で減点方式で採点を行い70点以上を合格としている。、持ち点が69点以下になればもちろん検定中止。また検定中に危険行為や規定されている検定中止行為をした場合は即刻検定中止となる。例えば、一本橋での橋からの脱輪、パイロンを倒すや急制動で規定距離内に停まれないなど。 

 ◇◆ 99年2月21日(卒業検定) ◆◇ 

 この日の検定は普通二輪車も含めて7人ほどだったと思う。私を含めて4人が大型二輪だったように思う。検定が始まるまで雑談する。隣の人は30才代半ばでバイクに乗りたくなり、普通二輪免許から取り始めたと言う方。すでにバイクを買っており、ツーリングの約束もしているので何が何でも通らなくてはならないとか。一人目が始まってしばらくして『出発点に戻って下さ〜い』『・・・・・』一人目は早くも検定中止となったようだ。

 私に順が回ってきた。心なし緊張している。検定が始まる。とにかくオーバーリアクションを心がけたので、発進時や出発時の後方確認などは大げさなぐらい行った。前半は何の問題もなくクリアして行く。後半に入る。L字から波状路まで問題なくクリア。『よっしゃぁ』と思い、急制動に向かうべく加速に入る。

 が、ここで3速に入れ損ねたまま40k/hを出してしまった!『やばい!』と思った途端に頭が真っ白になったが、腕が勝手に動いてブレーキを掛ける。しかし次の瞬間、何故かブレーキを緩めてしまい停止線を越えてしまった。(この間約1秒)この日は快晴。停止線は11mの方で、私は見事14m(雨の日用)に停まっていた。一発検定中止・・・『検定中止で〜す。じゃぁそのまま出発点に帰って下さい』と無情の声がスピーカーから流れる。

 暗い顔して待機所に入るわけには行かないので、明るく繕って待機所に入る。『いやぁ急制動で失敗しましたわ・・・』ツーリングを控えた30代半ばの方も検定中止。この日は一人だけが合格しただけであった。

 この日の午後は大型二輪の予約が入っていなかったので、落ちたメンバーで午後から補習を受講する。急制動は2速でも40k/h出ていれば良いという話を聞きかなり気分が楽になった。すると検定コースを完璧に回ることが出来た。教官に『なんで落ちたん?』と不思議がられてしまった。

 かくして明後日に2回目の卒業検定を受けることになった。

 ◇◆ 99年2月23日(卒業検定2回目) ◆◇ 

 2回目の卒業検定の日。前日寝るときもイメージトレーニングを行い『必勝』体制で検定に望む。一昨日落ちた人のうちで受けるのは例のツーリングを控えた方だけで、他の人は初めて受験するようだった。

 で私の検定が始まる。前半は難なくクリア出来る。よほどの事がない限り前半で失敗することはない。波状を過ぎて鬼門の急制動に向かう。近づくにつれて体内のアドレナリン分泌量は普段の120%(本人比)となった。心臓がバクバクなっているのが分かる。

 ギアの事は考えずに2速のまま(もしかしたら3速に入っていたかも)突入。ブレーキを掛ける地点でで40k/h出ていることを確認してブレーキを掛ける。11mライン手前で停止。クリアした!後方確認とウィンカーを点滅させて出発。スラロームにさしかかる。スラロームにさしかかったとき、『これをクリアすれば大型二輪ライダーや』と一瞬気が緩み、バランスを崩して突入してしまう。次の瞬間、『はい検定中止。出発点に戻って』との放送が入った・・・後ろを見ると、最後の3つ並んだパイロンの左端のパイロンが無情にも路面に寝転がっていた・・・一瞬にして天国から地獄に突き落とされたのだ。唖然とする私。でもどうしようもないのが事実である。

 ツーリングを控えた方は見事合格。かくして私は補習の手続きをとって肩を落として家に帰った。

 ◇◆ 99年2月26日(卒業検定2回目の補習) ◆◇ 

 2回目の補習。検定の前半コースと後半コースを回る比率を1:3位にして、とにかく後半コース(特に急制動とスラローム)を中心に徹底的に練習する。その姿は鬼気迫るモノだったとか・・・(ウソです)

 ここでふと考えた。何かが足りないのか?『何が何でも合格するぞ!』と思わせる要因が私にはないことに気付く。となればやることは一つ。その帰りにバイク屋に寄り、ZRX1100の見積もりを出して貰う。まだ正式購入という訳ではないが、ほぼ買うつもりで現車を押さえておいてもらうことにした。これで何が何でも合格しなくてはいけない状況に自分を追い込んだ。それが果たしてどうでるか?結果は明後日の検定で。

 ◇◆ 99年2月28日(卒業検定3回目) ◆◇ 

 3回目の検定の日がやって来た。教官と顔見知りになってしまい、『今日は受かりや』と直々に声を掛けられてしまう。

 一人目の受験者が出て行く。待合室で待つ時間が非常に長く感じる。一人目がL字クランクに入ってしばらくすると『ガチャン』という音が。一人目が帰って来た。かなり緊張していて、ぎくしゃくしてL字クランクのカーブで転けてしまったらしい。検定中止だ。

 そして私の番。緊張しないつもりで出て行くが、やはりどことなく緊張している。スタートする。前半は難なくクリアする。自分でも完璧と思えるほどだ。後半、一人目が転けたL字クランクを無事通過。S字を越して坂道発進を終えてる。波状を越えていよいよ急制動へ。40k/h出して11mラインで無事停まる。見事成功!

 気を引き締めてスラロームに向かう。緊張しているのと前回の失敗があるのでやはり意識してしまい、自分でも分かるぐらいカーブを大きく取ってしまう。7秒を少し越えてしまったがパイロンを倒していないので無事クリアできた。

 残るは一本橋。これさえクリアすれば大型二輪ライダーだ。『10秒以下でもいいから橋から落ちないこと』だけを心がける。ここまで減点はスラロームぐらいなので、8秒以上でクリアすることを目指す。スタートラインに停まる。心臓がバクバクしているのがよ〜く分かる。余計なことは考えずに一本橋に向かう。前輪乗った。後輪乗った。あとはリアブレーキと半クラッチの操作だけ。ひたすら向こうのマンション屋上をみながら進む。やがて終点に到着。時計は8秒を過ぎたところ。これ以上踏ん張ると脱輪しそうなので、一気に下りる。時間は8秒30ぐらい。しかし15mがこんなに長い距離だったろうかと思えるほどの時間が過ぎたような気がした。減点対象だが、中止されないところを見ると大丈夫のようだ。

 最後の交差点を左折し出発点へ。エンジンを切り、後方を確認してからバイクから降りる。そしてスタンドを立てる。すべて終了。『はい、お疲れさまでした』との声がスピーカから聞こえる。かくして卒業検定は無事終わった。

 待機所では合否の結果は発表しない。不合格の人は先に出て行くが、残された者とて検定は終了したが実際に合格しているかどうかは分からない。でも残った者はほぼ間違いなく合格している。その後、別室に移動。

この日は大型免許と大型特殊の卒業検定もあったので、その検定を受けて残った人が来るのを待つ。

30分ほど安全講習ビデオを見る。実は、この時点で『合格』を確信していた。

 ビデオが終わると教習所の偉いさんがやって来て、ここに居る全員が合格していることを告げる。室内が明るくなった。今後の手続きについての説明の後、修了検定合格証を貰う。『これで大型二輪ライダーや!』そう思うと自然と口元が緩む。

 かくして2ヶ月近くに及ぶ大型二輪免許教習は終了。お世話になったT自動車教習所を後にする。

 ◇◆ 99年3月4日 ◆◇ 

 この日、光明池自動車免許試験場にて無事に免許の更新手続きを終える。免許証に『大自二』が書き加えられた。これで免許の上では大型二輪ライダーになったわけだ。

 やはり免許を取ってしまうと大型バイクに乗りたくなってしまった。皆にさんざん突っ込まれながらも、バイク屋に行って詰めの交渉を行い、99年4月3日に正式契約を結ぶ。手続きの関係で納車は99年4月13日となった。これで正真正銘の大型二輪ライダーになったのだ。

大型二輪免許取得あどばいす

◇◆◇ どこで取得する? ◇◆◇

 大型二輪免許を取得する方法は2つあります。『警察の運転免許証センターで一発合格を目指す』か『一般の教習所で取得する』かです。

◇『警察の運転免許証試験所で一発合格を目指す』場合

 金がない方にはこちらがお勧め。おそらく料金は全国一律だと思いますが、大阪府の場合だと試験手数料3300円、車両使用料1100円、免許交付手数料1750円、大型二輪免許取得時講習代12600円、応急救護処置講習代3600円となっています。(2000年8月現在)

 普通二輪免許を持っている場合は(大型二輪免許)試験合格後の取得時講習を、普通免許を持っている場合は応急救護処置講習は免除されます。

 とりあえず、一回の試験につき試験料と車両使用料の計4400円が必要となります。後は合格後に必要な経費となります。0から受験する人であれば約25000円で大型二輪免許を取得出来るというわけです。

 ただし警察の運転免許証試験所で一発合格するのは至難の業。中には一発合格される方もおられますが、最低3回は受験しないと合格しないとか・・・それでも教習所に通うよりは安く付きます。

 大阪府の場合は、門真と光明池の2箇所の運転免許試験場で試験を実施しています。(門真が午前中に、光明池は午後に試験を実施。くわしくは大阪府警のHPを見て下さい。) 警察の運転免許試験場で取得しようと考えている方は、専門の本やホームページがたくさん出ているのでそちらを参考にして下さい。

 もし免許証試験所で受験される場合は、必ず何回も見学に行くべきです。雰囲気に慣れるためということもありますが、試験を受けている人を見ているだけでもかなり勉強になります。

◆『一般の教習所で取得する』場合

 金に余裕のある方。短期間で確実に取得したい方。警察が苦手な方にはこちらをお勧め。

 選ぶポイントは2つあります。

 まず値段。教習料金は教習所にばらばらだが、12回の実技と卒検1回分を含めて7〜10万円ぐらい。もちろん再受講や再検定となれば、その分の料金が加算されます。

 もう1つ目のポイントは検定コースがどうなっているかでしょう。スラロームや一本橋といった失敗しやすい課題が最初に来るか最後に来るかで卒検での緊張の度合いはかなり変わります。検定が始まったら誰でも緊張しているもの。なのに最初の課題が一本橋で、いきなり橋から落ちて検定中止となったら、高い金払って何しに来たのか分かりません。やはりやさしい課題を一つずつクリアして緊張を和らげ、普段通りに近い状態で難しい課題にアタックする方が合格率は上がるものです。私が選んだ(たまたま家から近くて安かったからですけど・・・)大阪府高石市の南海本線近くにあるT自動車教習所は、スラロームと一本橋が最後に設定されていました。

 他にも『教習車が何なのか?』、『混み具合はどう?』、『ヘルメットは貸し出してくれるのか?』とかいったことがありますが、これらはさして問題にはならないでしょう。先に挙げた2点の方が重要だと思います。

 個人的な意見ですが、『実技や検定が厳しいかどうか?』『教官が厳しいか?』といったことで教習所を選ぶことはしない方がいいでしょう。中途半端に教えられ検定も甘々で合格しても、そういう人はまず間違いなく事故を起こします。免許を取得して実際にバイクに乗って運転するのは自分自身なのですから、厳しく教えて貰う方が身のためになると考えるべき。(これは命に関わるライセンス全てにいえることですけど・・・)

 卒検に合格すればあとは運転免許試験場に行って交付してもらうだけ。ただし教習所では期限が在るので、のんびりしていると受講できなくなるので注意が必要です。

 詳しくは各教習所のHPや免許取得の体験談のHPを参考にして下さい。(『作り人』お勧めのHPはこちら

◇◆◇ 『普通二輪免許→大型二輪免許』何が問題? ◇◆◇

 

 大型二輪免許を取得する人は、0から出発して普通二輪免許を取ってそのまま大型二輪免許を取る人と、既に普通二輪免許を取得しており、また新たに大型二輪免許を取得しようとする人の2種類に分けられます。

 0から始める人はほとんど問題ありませんが、既に普通二輪免許を持ち普段からバイクに乗っている人が大型二輪免許を取得する時に難題があります。私は後者の部類に入っていたのですが、普段から何かのバイクに乗っている人はとかく『自分のクセが出やすい』のです。

 ”出発時にミラーで確認せずに直視で行う。””ウィンカーを点けてすぐ車線変更する。””バイクを倒して膝を擦りながらカーブを曲がる。”などなど。こういうことを普段している人は、教習中(検定中)に無意識にしてしまうことがあります。特に検定ではクラッチレバーやブレーキレバーの握り方やスタンドの立て方、スタート時の確認が注目されます。普段乗っている時から教習所で教わった通りにしていれば別ですが、ほとんどの人は指二本でレバーを握ったりバイクに乗車したままスタンドを立てたりしています。こういうクセは普段から意識すれば直せますので、教習所通いを始める1週間前から検定が終わるまでは意識的に教習通りに乗り降りするのが良いでしょう。

 普段からバイクに乗っている人のもうひとつの問題は、(当たり前の事なのだが)普段乗っているバイクと教習所や検定で使用されるバイクが違うということ。大抵の教習所はメーカはいろいろあるだろうがまずNK(ネイキッド)バイクを使用します。私が通ったT教習所はCB750でした。(まさか教習車にZZR1100とかZX−12、GSX1300を採用している教習所はないでしょう・・・)普段からNKバイクに乗っている人はさして抵抗なく乗ることが出来ますが、レプリカやアメリカンに乗っている人は、乗車姿勢や視線の位置などで抵抗を感じますが、これは慣れるしか解決策はありません。

 バイク自体に言えることは、大型バイクはとにかく力が強いこと。Lowに入れていてもエンストせずに勝手に動きます。大型バイクに乗っている人に言わせれば当たり前のことなのですが、初めて乗るとこれは驚きです。この特性をうまく利用すればL字クランクや一本橋は楽にクリア出来るのですが・・・

◇◆◇ 卒業検定を受ける時のコツは? ◇◆◇

 

 卒業検定は100点満点で減点方式で採点し70点以上で合格となります。100点満点だろうが70点ちょうどでだろうが、合格は合格です。必ず100点満点でなくてはならない理由はありません。課題を全てパーフェクトでクリアしなくていいのです。苦手な課題は、検定中止項目に引っかからず減点でクリアすればいいのです。(それまでに30点の減点を貰っていなければの話ですけど・・・)

 例えば一本橋。10秒以上かけて渡らなくてはならないと思いこみ、ゆっくりと進むがブレーキを掛けるタイミングを誤りバランスを崩して橋から落ち、検定中止というのはよくあります。一本橋は10秒以内に渡っても減点対象にはなるが検定中止にはならないので、とにかく橋から落ちないことを心がけること。落ちそうったら一気に渡ってしまった方が良いでしょう。

 同じ事はスラロームにも言えます。7秒以内にと思いこみ、小さな間隔で回ろうとしてパイロンを倒して検定中止となることが多い。7秒以上でもいいからパイロンから少し離れて大きな間隔で回ってクリアした方が良いです。

 ただし時間制限のある課題ではあまりにも短すぎたり(10秒のところ5秒とか)すると減点大か検定中止となることがありますので、ほどほどにしておいて下さい。時間過超過、例えば一本橋を20秒以上でクリアすると言った場合は、減点はないでしょうけど加点もないと思います。

 検定の時に普段の乗り方のクセが出て検定中止となってはアホらしいので、行動一つとっても意識的にするべきでしょう。出発時や車線変更時の後方確認や踏切での左右確認など、細かい行動はオーバーに行動して下さい。

◇◆◇ 大型二輪ライダーになったら・・・ ◇◆◇

 

 中型から大型バイクに乗り換えた直後は一番気を付けないといけません。中型バイクのつもりで運転すると事故になります。私は乗り換えた直後に400ccのつもりでスロットルを開けてしまいカーブから飛び出しそうになりました。パワーが全く違うことを意識して下さい。

 最後に。よく言われていますが、大型ライダーはよく注目されます。『見る』『見られる』運転を心がけましょう。(一番らしくない私が言うのも何ですが・・・)

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