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■輸送艦『しもきた』 (LST4003)

 輸送艦『しもきた』は海上自衛隊の輸送艦『おおすみ』型2番艦として20

02年(平14年)3月に竣工した。

 『おおすみ』型輸送艦では、それまでの海自輸送艦とは搭載車輌の揚陸方法が大きく異なり、LCACと呼ばれるエアクッション艇を使用しての揚陸するようになっている。(それまでの輸送艦は艦自体が浜辺に接岸して艦首から揚陸させていた。)

 外観上は長く平坦な甲板を有する空母船体が特徴。その形ゆえ、1番艦『おおすみ』竣工時は、軍事知識を全く持たない一部マスコミ記者や(自称)平和活動家などから「空母だ!」と騒がれたことがあった。実際に乗艦して甲板に出れば、ジェット戦闘機の離発着が不可能な甲板であることは一目瞭然である。 

 『おおすみ』型の甲板は前部が車両甲板、後部がヘリコプター発着甲板となっている。発着スポットは2カ所あるが、ヘリについては上甲板全面に発着が可能となっている。ただしヘリコプターは格納できても数機だけであり、そもそもヘリコプターの整備機能はない。

 『おおすみ』型輸送艦には陸上自衛隊の90式戦車10両と完全武装の揚陸部隊330名の輸送能力があり、大型ヘリコプターやLCACを用いた迅速かつ三次元的な揚陸作戦が遂行可能になっている。

 艦内には移送する陸自隊員用として330名分の居住施設がある。ここは災害派遣時には避難した人達の宿泊施設にもなるほか、足りなくなった場合は艦内の車輌格納庫内も宿泊施設となるそうだ。手術室などの医療設備も充実しているので、災害派遣時には洋上基地としての活用が期待されている。

 同型艦として『くにさき』(LST4001)、『くにさき』(LST4003)が竣工しており、3隻で第1輸送隊を編成している。

●『しもきた』Data

 基準排水量:8900t/満水排水量:14000t

 全長:178m/全幅:25.8m

 機関:ディーゼル2基2軸/出力:26400ps

 速力:22ノット

 乗員:135名

 武装:高性能20mm機関砲(CIWS)2基/チャフ装置6連装4基

 輸送用エアクッション艇(LCAC)2艇搭載

 竣工:2002年(平14年)3月12日/建造:三井玉野/所属:護衛艦隊第1輸送隊/母港:呉

■外観

 

 

 2008年(平20年)7月の呉地方隊展示訓練で松山に停泊中の『しもきた』です。海側から撮影できるポイントがなく、このアングルしか撮影できませんでした。この写真もフェンス扉の隙間からデジカメを入れて苦労して撮影した写真です。

 さて、外観とか装備などは同型艦の『おおすみ』と『くにさき』でも記述しているので、『しもきた』では簡単に、補足説明的に書いてゆきます。

 平坦で長い甲板を持つ輸送艦『しもきた』。『おおすみ』型輸送艦の外見上の特徴がこの空母船体。もちろん空母ではありません。艦橋前の前部甲板が車両甲板で、後部がヘリコプター発着甲板となっています。ヘリコプターについては全甲板に発着できるようになっていますが、任務の性質上当然でしょう。

 艦橋などの構造物は艦の右舷側に設けられています。このアングルから見ると、艦橋上の各レーダー類、マストの形状や配置が分かります。艦橋やマストはステルス設計を採用しています。

 水面下にあるので見えませんが、艦首底はバルバス・バウ形態を採用しているとのこと。輸送艦でバスバス・バウ形態を採用さいたのは『おおすみ』型輸送艦が初めてだそうです。

 ちなみに今の輸送艦『しもきた』は2代目。初代はアメリカ海軍から貸与されたLST型揚陸艦3隻のうちの1隻で、1975年(昭50年)3月末で除籍・返還されています。貸与された 3隻のLST型揚陸艦は『おおすみ』型輸送艦として活躍していました。なので輸送艦『おおすみ』も2代目となります。(あと一隻は『しれとこ』という艦名でした。) 初代『おおすみ』型輸送艦は、『あつみ』型輸送艦と置き換えられ、その『あつみ』型輸送艦を置き換えたのが、今の『おおすみ』型輸送艦というわけです。

■車両甲板

 サイドドアから艦内に入ると、そこは車両甲板となっています。 広さは約2190平方メートル。一坪が約3.3平方メートルなんで約664坪という広い車両甲板となります。ここに陸上自衛隊の戦車や各車両などを収納することになります。

 

 

 艦中央から艦首方向を見てみます。今回は右舷のサイドドアから入ってきています。もちろん左舷にもサイドドアがあります。

ドアより先の区画に艦首のエレベータが降りてきます。

 

 

 艦尾方向を見ます。広い車両甲板で、90式戦車に対応した甲板強度を持っているそうです。奥に見える仕切から先がLCACを収容するウエル・ドック。 『しもきた』にはLCAC3号艇と4号艇が収容されていました。その手前、仕切の右側に置かれているのが甲板内作業車。

 

 

 2008年(平20年)7月の展示訓練での光景。上甲板に参加者を上げるためにエレベータが動いていました。広さからすると90式戦車やヘリは無理な広さです。大きな車両や戦車などは前のエレベータとなるのでしょう。

■ウエル・ドック

 車両甲板の艦尾側に設けられたのが「ウエル・ドック」と呼ばれるLCAC収容エリア。ここにLCACを2隻収容することができます。幅約15m、長さ約60mとなっており、LCACは艦尾にある門扉から出入りします。『 しもきた』などの母船が航行中であっても発進・収容が可能となっています。

 

 

 ウエル・ドック内部。とは言ってもLCAC3号艇と4号艇が収容されていたので、LCACの甲板上から艦尾方向を撮影しています。 後方のハッチは全開状態ですが、近づけなかったので、3号艇と4号艇の境付近から撮影です。

 

 

 展示訓練時に撮影したLCAC収容風景。すでに1艇(どちらか不明)が収納されており、今からもう1艇がドック内に入って来るところです。車両甲板とウェル・ドックとの境付近にまで水滴が飛んできていました。

 こういう光景は、展示訓練時に『おおすみ』型輸送艦に乗っていないと見ることができない光景です。ちなみに同じ日に、博多の方でも展示訓練が実施されており、そちらには『おおすみ』が参加していたとか。そちらでも同じ光景を見ることができたのかもしれません。

■上甲板

 上甲板は船首寄りの車両甲板と船尾寄りのヘリコプター発着甲板から構成されています。広さは上甲板だけで約3600平方メートル(約1090坪)もあります。

 ヘリコプターは発着できますが、護衛艦のようなヘリ格納庫はありません。格納する場合は車両甲板に下ろすことになります。そのエレベータは前後に2基設置されています。ヘリコプターも載せて運搬できるようですが、大きさに限界があるために格納するヘリは限定され、なおかつ格納するに際してもローターブレードを外さないとだめなようです。

 

 

 艦橋後部からヘリコプター発着甲板を見ます。○と×で描かれているのがヘリコプター発着場。2機の運用が可能になっていますが、車両甲板上にも発着が可能となっています。 右舷に見えるのは艦橋。後部に見える白いポットみたいなのがCIWSです。

 

 

 空気入れ換えのためか、たまたま開いていた前のエレベータ。安全確保のため、周囲に立ち入りを制限するポールと鎖で囲まれています。

 

 

 2007年(平19年)8月の展示訓練で『くにさき』に乗艦した時に船内にあった写真パネルを撮影したもの。2004年(平16年)末のスマトラ沖地震の救援活動時の一コマでしょう。前のエレベータで陸自ヘリ(UH60)を車両甲板に下ろそうとしています。 UH60JAの全長は19.76m(胴部15.64m)、全幅16.36m(胴部4.30m)。ローターブレードをつけたままではおろせないめ、ローターブレードは取り外されています。尾部のローターもギリギリという状態で 、どうにか下ろせたというこうとでしょう。写真では同じようにポールと鎖が出ています。得れエレベータ使用時には自動で出るんですかね?

 写真では隣にCH47が同じくローターブレードを外され、防錆シートをかけられて甲板上で固定されています。艦橋横には陸自車両が同じく甲板に固定しているのが見えます。こういう形で車両などを運搬するのでしょう。

 

 

 艦橋後部の後部エレベータ。広さからして装甲車ぐらいまでが限界のようです。今回は出港港出発前と到着後に一部参加者を運んでいました。車両甲板に降りる際に乗りましたが、黄色いポールの内部に立って降りました。箱物ではないエレベータに乗ったのは初めてだったので、降りる際に周囲の壁(?)を見ながら降りて行くのは新鮮な感じでした。

■兵装

 『おおすみ』型輸送艦には輸送艦でありながら兵装が施されています。とは言っても護衛艦のような速射砲や対潜兵器などは搭載しておらず、あくまでも自衛用の兵器として高性能20ミリ機関砲(CIWS)を2機搭載しています。艦橋の前後に鎮座しているR2D2のようなのがCIWSです。

 CIWSは対ミサイル用の機関砲で、レーダーで目標を探知すると、最も危険な目標を自動選定して追尾レーダーで自動追跡。自艦までの距離が約2kmとなると射撃を開始します。レーダーからのデータをもとに誤差を修正して追尾・射撃を続け、目標が破壊されると次の目標を自動的に探し出し攻撃するという優れもの。欠点はありますが、水上艦艇にはなくてはならない兵器です。 

 LCACも搭載兵装ということになりますが、LCACは別項で説明します。

 

 

 写真は艦橋後部に配置されたCIWS。CIWSは海上自衛艦のほとんどの艦艇に装備されています。キャタピラ付けて自走してくれたら完璧なんですが・・・。(;´∀`)

 写真左下の赤い砲は消火機です。ヘリ離発着時の不測の事態に備えています。ヘリ格納庫はありませんが、ヘリが発着するということで、『おおすみ』型輸送艦には消火機が装備され、また防護服に身を固めた消化班も組織されています。

 機関銃類もあるはずですが、展示訓練時、『しもきた』では公開されませんでした。12.7mm重機関銃、64式7.62mm小銃、56mm機関銃などが搭載されているはずです。

■艦内

 展示公開の間、非公開・立入禁止の区域・部屋以外は艦内を自由にウロウロすることができました。艦橋にも出入り自由。真剣に繰艦している最中に艦橋にお邪魔したりしていました。(さすがに声はかけることはできなかったです。)

 公開エリアは「車両甲板〜食堂〜上甲板〜艦橋」の4カ所と一部通路ぐらいだったので、ここを何度も行き来してました。居住施設は 立ち入り禁止区域があったりして撮り損ねました。m(_ _)m 同型艦『おおすみ』のレポをご覧下さい。

 

 

 展示訓練を終えて松山港入港時の艦橋。漁船やプレジャーボート、フェリーに民間船が多数行き来している海域なので、かなり緊張して周囲を確認していました。もちろん、何事もなく無事に入港・接岸しています。

 レポというには簡単すぎる内容ですね。m(_ _)m 同型艦3艦に乗ってしまいレポを書くと、重なる内容ばかりなので・・・。一部文章も同じのを使い回しています。(^^;)

 同型艦全艦(それも輸送艦)に乗る機会はそうそうないのではないかと思います。貴重な体験と言えますかね?スタンプラリーでもあれば良かったのですが・・・(;´∀`)

 また乗る機会あれば乗ってみたい艦種です。 

【終わり】

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