大阪港や神戸港など大阪湾に面した港への自衛艦入港は年に数回程度。一般公開が行われるのは年3〜4回ぐらいです。入港してくる艦艇も限られてしまいます。

 ならばこちらから出向いていろんな艦艇を見てやろうと思い、舞鶴地方隊北吸桟橋(自衛隊桟橋)に見学に行くことにしました。

 曜日は限定されますが、これならばいつでも好きなときに自衛艦を見たり乗艦できたりすることができます。なんで今までなんで思いつかなかったんだろう?

 さっそく一回目として、2007年(平18年)11月に行ってきました。 

 

>>2008.06.18 Update

●舞鶴へ

 今回は職場の後輩である翔鶴瑞鶴(以下、瑞鶴)と共に舞鶴に向かうことになります。なので車での移動。渋滞を予想して、大阪市内の某所を7時頃に出発。中国道〜舞鶴道 での移動を考えたのですが、中国道では早くも渋滞が発生してたため、R173で綾部まで北上してR27経由で舞鶴入り に変更。最短ルートで舞鶴入りしたのは9時過ぎでした。

  さて本来の目的である舞鶴の桟橋見学は後回しにして、まずは舞鶴地方総監部に向かいます。 左写真は陸橋から撮影した総監部正門。祝日なので国旗が立てられています。

 自衛隊(軍隊)の基地ですが、在日米軍基地のように歩哨の兵士やMPが実弾こめた銃を持ってウロウロしておりません。みたところ民間企業の工場正門と言った感じですな。詰め所には自衛官が詰めており、来訪客のチェックなどをしております。

 詰め所で手続きをして名札をもらい、指定された駐車場に車を止めます。そして目指すは総監部敷地内にある『海軍記念館』です。

●海軍記念館

 許可をもらって敷地内に入ったとはいえ、一般人が立ち入る区域は限られています。駐車場から『海軍記念館』までの道路と記念館のみだけが自由に立ち入ることができます。他は入ってはならないのですが、瑞鶴と共に記念館の全景を撮影するため良い撮影位置を探してウロウロしていていたら警務隊の人がやってきて、やんわりと注意されました。(^^;)

 さて海軍記念館は旧海軍機関学校の大講堂内の一角に、1964年(昭39年)5月27日に設置された展示室。旧海軍の大変貴重な資料約200点余りが展示されています。舞鶴だけあって東郷平八郎元帥縁の品々も多く展示されています。 ちなみに5月27日は海軍記念日であり日本海海戦の日であったりします。

 

 

 大講堂は1933年(昭8年)10月に完成しました。終戦後、連合軍に接収された後はダンスホールとして使用されたそうで、その際に外壁はペンキが塗られていたとか。江田島の旧海軍兵学校の大講堂も同じようなことをされたそうです。もちろん今はペンキは全て取り除かれて、 立派な煉瓦造りの大講堂がよみがえっています。

 

 

 『海軍記念館』入口。入口から入ると、旭日旗の前に東郷平八郎元帥の銅像があります。この銅像、終戦時に「連合軍に処分されるのではないか?」と心配した方達によって山中の地中に隠されたそうです。ところがその場所が分からなくなり、戦後しばらくは行方不明に・・・。しかし1963年(昭38年)に偶然発見されて海上自衛隊に寄贈され、現在に至っています。

 玄関から中にはいると大変貴重な資料がズラリとならんでいます。日露戦争中の旅順港口封鎖作戦で沈められた福井丸の木材や広瀬中佐の脱出時の絵画、東郷元帥縁の品々、旧海軍の貴重な資料などなど・・・。海軍ファン必見の記念館です。なお、玄関から内部は撮影禁止となっています。

●自衛隊桟橋

 海軍記念館を出た後は北吸桟橋(自衛隊桟橋)に向かいます。車で移動しても構わなかったのですが、歩道から桟橋を見ながら歩きたかったので車を止めたまま桟橋に向かいます。

 

 

 R27を跨ぐ陸橋上から見た北吸桟橋。曳船3隻の後ろにミサイル挺が2挺。そのさらに後ろに護衛艦が見えます。この場所からは艦艇が何なのかはっきりと分かりません。歩道を歩いて行くと、停泊している護衛艦にフェーズド・アレイレーダーが見えたので、一隻はイージス艦であることが分かりました。テンションあがります。(・∀・)

 桟橋入口に到着。敷地内に入り受付で氏名と住所を記入し許可証をもらって桟橋内に入ることができました。今日(11/23)は桟橋からの見学のみで、艦艇に乗艦しての見学はできないとか。う〜ん、残念。

 ひとまずは桟橋の東端まで歩いて、東→西方向に歩くことにしました。以下、停泊していた艦艇です。

◆補給艦『ましゅう』(AOE425)

 イージス艦の東側に停泊していましたが、最初何なのかさっぱりわからず、歩いて近づいたら『ましゅう』であることが分かりました。

 補給艦『ましゅう』は全長221m・艦幅27mという海上自衛隊最大の艦艇。2004年(平16年)3月に就役した、『ましゅう』型補給艦1番艦。同型艦(2番艦)として『おうみ』が就役しています。

 

 

 最初イージス艦越しに見たとき、後部にあるヘリ格納庫と角張った煙突で『むらさめ』級か『たかなみ』級護衛艦かと思ったのです。にしては艦幅が広すぎる・・・。近づいたら『ましゅう』だったわけです。

 ご覧の通り、『ましゅう』型には後部にヘリ発着甲板と格納庫が設けられています。固有搭載ヘリはありません。武装もありませんが、20mm機関砲(CIWS)2基を搭載できる設計にしてあるそうです。

 

 

 桟橋の東端から撮影。あまりにも巨大すぎて艦首から後ろの全景を撮影することができません。大きな艦だけあって、洋上ではほとんど揺れないそうです。インド洋での洋上補給で、『とわだ』型補給艦ではどうも使い勝手があまり良くなかったため、大型の(というか世界的には標準クラスの)補給艦である『ましゅう』型が優先的に(?)派遣されているそうです。

 

 

 自衛隊桟橋からではなく、離れた別の場所から撮影した『ましゅう』全景。離れて見ると、巨大な艦であることがわかります。

◆護衛艦『みょうこう』(DDG175)

 イージス護衛艦『みょうこう』は1996年(平8年)3月に就役した『こんごう』型護衛艦の3番艦。特徴はフェーズド・アレイレーダー(SPY−1D)。艦橋の周囲に4枚設置された六角形の盾のようなのがレーダー。このレーダーとコンピューターなどにより、目標の捜索・探知・攻撃までを短時間で行うことができます。防空に重点を置いた護衛艦です。

 

 

 搭載している砲は127mm単装速射砲で、その後ろにある白いカプセルみたいなのが20mm機関砲(CIWS)です。対空ミサイルやアスロックなどは甲板下に設置された垂直発射システムから発射されるため、発射装置などは搭載していません。

 艦首から艦尾方向を見ると、他型の護衛艦と違って、上部構造物はごちゃごちゃしていません。艦橋自体もスッキリと角張っており独特の形をしています。

 写真左が後部右舷側のフェーズド・アレイレーダー。六角形をしています。写真右が艦橋より後ろの煙突などの構造物。すっきりとまとめられています。

 

 

 艦尾から見てみると、艦橋より後ろの構造物の幅が狭いことがよく分かります。これも『こんごう』型の外見上の特徴。よく見ると後部のフェーズド・アレイレーダーの邪魔にならないような配置となっています。後部はヘリ発着甲板となっていますが、格納庫はなく固有搭載機はありません。

◆護衛艦『あまぎり』(DD154)

 『あさぎり』型護衛艦の4番艦として1988年(平元年)3月に就役したのが『あまぎり』。後述の『はつゆき』型護衛艦と共に、”八八艦隊”構想下で建造された護衛艦です。兵装は『はつゆき』型護衛艦と基本的に同じですが、『はつゆき』型護衛艦の運用実績などから上部構造物のスチール化や探知性能と情報処理能力の向上など、いろいろと改良された護衛艦となっています。

 

 

 『あまぎり』型護衛艦の外見上の特徴は、2本のラティス・マスト。上の写真では重なっていてわかりずらいのですが、手前のマストにレーダー類、奥のマストにESMアンテナを装備しています。煙突のシフト配置と巨大な格納庫も特徴ですが、これらが災いしてステルス性はあまりよくないそうです。

 上左写真が艦橋付近。1番マストの下にあるのが20mm機関砲(CIWS)。左右舷に1基づつ搭載されています。上右写真が艦橋から後部を撮影した写真です。右端が切れてしまっていますが、煙突がシフト配置になっているのが分かります。前部(艦首寄り)のが左舷側に、後部(艦尾寄り)のが右舷側に配置されており、後部煙突は格納庫と一体になっています。後部煙突の手前にある筒がハープーン対艦ミサイル発射装置です。

 

 

 原本写真のサイズが大きかったので、この写真は大きくなっています。『あまぎり』を艦尾から見た写真。ラティス・マストが2本あるのがわかります。

 艦尾の一段下がった甲板にあるのがシースパロー発射機。その後ろ、一段上がっている甲板がヘリ発着甲板。その前に巨大なヘリ格納庫が見えています。ちなみに練習艦に種別変更された『あさぎり』型護衛艦の1番艦『あさぎり』と2番艦『やまぎり』では、この巨大なヘリ格納庫内にプレハブ教室が設置されています。

 『あさぎり』型護衛艦は、今後建造される予定の5000トン型護衛艦に置き換えられることになります。その後はDE型を置き換えるという噂がちらほらと出ています。どうなるんでしょう?

◆護衛艦『みねゆき』(DD124)

 『はつゆき』型護衛艦の3番艦として1984年(昭59年)1月に就役したのが『みねゆき』。『はつゆき』型護衛艦は、4つの護衛隊群に5隻づつ合計20隻の配備を目指して計画された汎用護衛艦。合計12隻建造されました。(残る8隻は『あさぎり』型に移行) 『はつゆき』型護衛艦は、DDH以外の護衛艦では初めて対潜水艦用としてヘリコプターを搭載しました。多様な海上戦闘に対応できるよう、バランスの取れた兵装をしています。

 

 

 『はつゆき』型護衛艦のマストは一本だけ。煙突も1つで、巨大な格納庫もないので『あさぎり』型護衛艦と比べるとすっきりした印象を受けます。 艦橋の上、マストの左右に角のように見える白い物が20mm機関砲(CIWS)。『はつゆき』型では『みねゆき』が就役当時から装備していました。

 

 

 艦橋付近の上部構造物。『みねゆき』を含む7番艦『はるゆき』まではアルミ合金を使用していますが、フォークランド紛争の教訓から8番艦『やまゆき』以降は鋼製となっています。艦橋の前にあるのがアスロック8連装発射機。マストの根本にあるのがCIWSです。その後ろ、煙突は1つとなっています。

 

 

 艦尾から見た『みねゆき』。発射機は短SAMシースパロー8連装発射機。その後ろがヘリコプター発着甲板で格納庫が見えます。『あまぎり』と比べるとスッキリしています。

 なお『はつゆき』型最終艦となる12番艦『しまゆき』は、1998年(平10年)度に練習艦に種別変更されています。

◆ミサイル挺『はやぶさ』型

 元々は沿岸における哨戒と対艦攻撃を主任務として計画されましたが、1999年(平11年)3月に起きた北朝鮮工作船の領海侵犯事件を機に、不審船対処能力を付加して設計され建造されたのが『はやぶさ』型ミサイル挺。

 

 

 艦番号825が『わかたか』、828が『うみたか』。舞鶴には他に824『はやぶさ』が配備されていますが、この日は姿が見えませんでした。

 さて『はやぶさ』型ミサイル挺は、ミサイル挺ながら護衛艦と同じ62口径76mm速射砲を搭載しています。船体自体がステルス性を考慮されているため、砲塔もステルス性を考慮したカバーがつけられています。

 艦中央部には10人乗りの複合型作業挺が1挺搭載されています。作業挺は不審船対処のために乗船させる特別警備隊員の臨検にも使用されるそうです。 操舵室後部にはチャフ発射機と12.7mm銃機関銃が設置されています。

 

 

 後部には90式SSM発射基が設置されています。『はやぶさ』型ではガスタービンによるウォータージェット推進を採用しています。艦尾に3本、足のように出ているのが推進機です。

 『はやぶさ』型は3挺で1個隊を編成し、2個隊分の6挺が建造され、佐世保と舞鶴に各1個隊が配備されています。

◆支援船

 海上自衛隊の各基地の港務隊に配備されている各種作業船です。艦艇の入出港時の支援に欠かせない船で、艦艇の回頭や牽引、消防や連絡など、いろんな作業に従事しています。2007年(平19年)3月末の時点で、海上自衛隊には第一種〜第四種まで、合計269隻の支援船が在籍しています。

 以下、舞鶴で見かけた支援船です。

○曳船(YT)

 支援船第一種に分類される曳船(えいせん)です。タグボートタイプの大型曳船で、艦艇入出港時の支援に欠かせません。離接岸時の牽引・回頭や無動力挺の牽引などに用いられます。操舵室の上には消火用の放水銃を装備しており、消火活動にも活躍できるようになっています。260トンほどあるそうです。

 左写真に写っているのは、写真左側よりYT92、YT94、YT64。各型があるそうなのですが、支援船についてはよく分かっておりません。m(_ _)m

 船内には居住設備も設けられており、基地以外の港にも移動できる能力があるとのこと。2007年(平19年)8月の展示訓練時に、大阪港(天保山)で活躍し

た大型曳船達は呉からはるばる遠征してきたということですな。

 左写真の船も曳船。こちらは50トンクラスの小型曳船で、操舵室が真ん中に移動しており、船首には揚索機が設置されています。船番号は残念ながら見えません。

 

 

 

○油船(YO/YG)

 これも第一種支援船に分類されています。油船と言っても船舶燃料を運ぶ「YO」と、航空燃料を運ぶ「YG」の2種類があります。さらに「YO」は有機力船(01〜)と無機力船(101〜)に分類されます。写真のYO31とYO38は、船舶燃料を運ぶ有機力船ということになります。

 

 

 

 

○運貨船(YL)

 第一種支援船に分類される運貨船です。その名の通り、各艦艇に物資を運搬・補給する支援船です。船首が開くようなので、上陸用舟艇のようにも見えます。物資をつり下げるクレーンを装備しています。運貨船も有機力船(01〜)と無機力船(101〜)に分類されています。

 ちなみに写真はYL14。その後ろ右舷側にいるのがYG(航空燃料用油船)。隠れて分かりませんが、200番台の番号が書かれています。YL14のすぐ後ろにいるのがYW(水船)23です。

 

◇巡視船『だいせん』

 北吸桟橋の正面にはユニバーサル造船舞鶴事業所(旧:舞鶴海軍工廠)があり、そちらの岸壁に海上保安庁の白い巡視船が接岸しているのが見えました。

 

 

 PLH10。第八管区所属の巡視船『だいせん』です。船尾にヘリコプター格納庫が設けられており、ヘリを1機搭載できます。PLH『つがる』型の巡視船に分類されてはいますが、実質的には全く別のタイプの巡視船となっています。灰色の海自艦艇を見ていたためか白い船は新鮮です。

●見学終了

 港務隊桟橋まで来ると北吸桟橋(自衛隊桟橋)も終わりです。ここから正門に引き返しました。73式小型トラックや業務トラックなどを見ながらブラブラと歩きます。駐車場になっている所はかつての桟橋だったところのようで、地面には標準軌のレールが埋め込まれたままになっていました。こういうところに眼が行くのは元鉄ゆえでしょうか。(^^;)

 最後は基地内の売店に寄って土産物を購入。北吸桟橋を後にしました。この後、舞鶴地方総監部の駐車場に戻って車に乗って市街をウロウロします。遅めの昼飯を食べた後、中国道の渋滞に巻き込まれたくないため早めに舞鶴を出発。大阪へと帰りました。

 こうも簡単に自衛艦を見ることができるとは思いませんでした。これなら暇な土日にふらりと立ち寄ることもできます。ツーリングの目的地にも良いかも。護衛艦をバックにバイクの写真を撮るために、また行ってきます。(;´∀`)

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