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■LCAC (Landing Craft Air Cushion)

 海上自衛隊の輸送艦『おおすみ』型に搭載されているエアクッション艇(LCAC)。見た目の通り、ホバークフト型の輸送艇。乗員は5〜6名。積載能力は約50tで、90式戦車1輌もしくは人員30名を輸送することが出来る。

 アメリカ海軍が使用している『エアクッション型揚陸艇LCAC−1級』と同型で、1993年(平5年)、95年(平7年)、1999〜2000年(平11〜12年)度にかけて合計6艇が調達された。海上自衛隊の『おおすみ』型 輸送管3隻に各2艇ずつ、計6艇が配置されている。

 艇の右舷にあるのが制御室(指令制御モジュール)で、左舷には人員装備モジュール

があり、ここと制御室下部にある部屋に輸送される人員が乗り込むことになっている。制御・人員モジュールから後ろの部分はエンジン機関とプロペラで占められている。

 当初は搭載艇の扱いであったが、2004年(平16年)に自衛艦に昇格。全6隻による「第1エアクッション艇隊」を編成している。

【写真】『平成19年度呉地方隊訓練展示』で撮影したLCAC6号艇

●『LCAC』Data

 基準排水量 100トン/満載排水量 180トン

 全長:26.8m

 幅  :14.3m

 主機:ガスタービン4基2軸/出力:約16000ps

 速力:40ノット(満載状態)

 乗員:6名

艦内から見たLCAC

 LCACが輸送艦『おおすみ』型に収容される時は、車両甲板後部にあるウエル・ドックと呼ばれるエリアに収容されます。ウエル・ドックは、長さ約60m・幅約15mの大きさがあり、LCACを2隻収容することができます。LCACの大きさを考えると、あまり余裕は無くギリギリの状態で収容することになるようです。

 LCACに乗ってみると、まず目に付くのが後部の推進用プロペラ。巨大な扇風機みたいなもんですか。機関はガスタービンで出力は16000psだとか。満載状態で約40ノットmの高速で航行するのですから、それなりの能力が必要なのです。

 

 

 『くにさき』搭載のLCAC(5号か6号艇かは不明)の車両甲板から後方を撮影。ラップが下ろされており、車両甲板から後方のLCACまで車両が移動で可能なように見えます。実際に可能なんでしょうかね?

 

 

 後方から前方を撮影。正面の仕切の向こうが『くにさき』の車両甲板。この日は一般乗艦もあったので、スクリーンが設けられています。

 LCACの車両甲板には陸上自衛隊の90式戦車(1両あたり約50トン)を1両搭載することができます。LCACの搭載量は通常で60トンまでですが、過搭載で75トンまで搭載することができるそうです。

 写真向かって右にあるのが制御室(指令制御モジュール)で、左が人員輸送のためのモジュールです。人員輸送モジュールの収容定員以上の人員を輸送する際には、車両甲板上に専用のコンテナが設けられるそうです。

 

 

 『おおすみ』搭載のLCACを通路上から撮影。艦尾のウエル・ドック門扉が開放されています。こう見るとドック内ギリギリまでLCACが収容されているのが分かります。なので輸送艦艦内からLCACの外観を見ることはできません。

LCAC右舷にある制御室。

『おおすみ』搭載のLCACを撮影。

内部はこんな感じ。乗員は3名。操縦席の下にも

輸送人員用の座席がありました。

左舷にある人員輸送モジュール。2部屋ありま

す。これも『おおすみ』搭載のLCACを撮影。

 

10名まで座れますが、座り心地はかなり悪いで

す。『くにさき』搭載のLCACを撮影。

『くにさき』搭載のLCACにあった説明板。

全景はこんな感じ。

 

■『くにさき』上甲板から見たLCAC

 『平成19年度呉地方隊訓練展示』に応募したところ当選。輸送艦『くにさき』に乗艦した際に撮影した写真です。 艦内からは全く分からなかったLCACの全景と”実際に動いている”LCACを見ることができました。

 LCACが航行している『くにさき』から発進。母艦である『くにさき』の左舷側を高速にて通過して行きました。LCACとは100mぐらい離れていたのですが、機関のガスタービンの音が結構大きく聞こえました。

 

 

 LCACの右舷側をやや前方から撮影。艦番号は2106なので、エアクッション艇6号艇です。

 艦番号が書いているところが制御室(コクピット)。制御室の向かいに人員輸送モジュールがあり、その間が車両甲板となっています。後部の丸いのが推進用プロペラ。

  航行中は膨らんだクッションで前方ランプの扉が半分ほど隠されています。海岸に上陸してクッションがしぼむとランプが開く仕組みになています。

 

 

 『くにさき』に一番近づいた時に撮影。輸送艦内のウエル・ドック内では全く分からない右舷側の状態が良くわかります。黒い部分(クッション)をふくらませて、ホバークラフトと同じように海面を進んで行きます。上陸可能な海岸の傾斜は6度までだそうです。それ以上の傾斜があると乗り上げることができません。

 側面に映える日章旗がいいですね〜。ヽ(゚∀゚)ノ

 

 

 右舷側をやや後方から撮影。輸送艦内にあるときは全く見えない後方の状態が分かります。LCACの車両甲板は全通式で、前方だけでなく後方にもランプが設けられています。

車両甲板には陸自の90式戦車を1両搭載することができます。また多人数の人員輸送の場合は人員輸送コンテナを設置して輸送するそうです。

■レインダンス

 

 

 水上でクルクルと回るLCACです。”レインダンス”と呼ばれるLCACだけのお家芸。プロペラの出力を調整して回るようですが、一瞬、姿が見えないぐらいに水飛沫が飛んでいました。

 

 

 上の写真は2008年(平20年)7月の呉地方隊展示訓練時のもの。『しもきた』の横でレインダンスを披露する3号艇です。

このときも、一瞬姿が見えなくなるぐらいに水飛沫が飛んでいました。

■『くにさき』に収容されるLCAC

 『平成19年度呉地方隊訓練展示』での光景。『くにさき』乗艦組だけが見ることができた特典でした。航行中の『くにさき』でのLCAC収容風景です。

 LCACは自走(?)して収容されます。曳航用のワイヤーやロープなどで引っ張っているのではありません。『くにさき』の速度が何ノットかは忘れましたが、当然のことながらLCACは”+α”の速度で航行してきてウエルドックに乗り上げる(?)ことになります。ドック内に入ってからプロペラを回したまま所定の位置まで進んで行きます。

 車の車庫入れのように、操縦士が窓から顔を出して前後を確認しながら出入りするなんでことはありませんでした。(;´∀`) 指揮所があるようで、そこから指示・誘導されているようです。それにしても寸法ギリギリのドック内に、しかも航行している輸送艦に、LCACをぶつけることなく出入りするとは恐れ入ります。

『くにさき』艦尾のウエルドック門扉が全開され、LCACがやってきました。

慎重に進入コースを選択。速度を上げて接近してきます。

人垣とデジカメ・カメラが凄かったです。

あっという間に接近して、門扉に乗り上げてウエルドック内に入ってきました。

ドック内の壁にLCACをぶつけることも擦ることもなく、余裕を持って収容されま

した。

■LCAC3号艇と4号艇

 2番艦『しもきた』にはLCAC3号艇と4号艇が搭載されています。LCACはすべて同型なので、航行している写真だけを載せておきます。写真は2008年(平20年)7月の呉地方隊展示訓練時のもの。『しもきた』から発進して行く時の姿です。

●LCAC3号艇

●LCAC4号艇

■LCACの活動

 『おおすみ』型輸送艦に搭載されているLCACは、輸送艦が近づけない海岸に物資や車両を揚陸する手段として有効です。

2004年(平16年)12月末に発生したスマトラ島沖の地震ならびに津波による国際救助活動において、『くにさき』搭載のLCACが活躍しています。

 最近では2007年(平19年)7月中旬に発生した、新潟県中越沖地震における救助活動において、同じく『くにさき』搭載のLCAC5号艇ならびに6号艇が柏崎市の海岸に上陸して、『くにさき』から陸上自衛隊の車両を揚陸しています。国内の災害救助活動においてLCACが用いられたのは初めてだとか。災害救助活動でその性能をいかんなく発揮しています。

 さてLCACですが、普段は各輸送艦において、消防など他省庁の車両を搭載し輸送するなど災害救助活動の訓練を行っている他、硫黄島など離島の自衛隊基地への輸送任務に就いているとのことです。

【終わり】

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