●輸送艦『くにさき』 (LST4003)

 海上自衛隊の輸送艦『おおすみ』型3番艦。2007年(平19年)8月5日に行われた、『平成19年度呉地方隊展示訓練』のため来阪しました。

 @管理人は同訓練に応募・当選し、『くにさき』乗艦することになり、初めて”動く”海上自衛艦に乗艦することができました。

 1番艦である『おおすみ』には以前に一般公開で乗艦したことがあったので、ほぼ2年半ぶりに同型艦に乗艦することになります。

 

 

>>2007.09.02 Update

 

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■輸送艦『くにさき』 (LST4003)

 海上自衛隊の輸送艦『おおすみ』型3艦。2003年(平15年)2月に竣工した。

 『おおすみ』型輸送艦では、それまでの海自輸送艦とは搭載車輌の揚陸方法が大きく異なり、LCACと呼ばれるエアクッション艇を使用しての揚陸するように

なっている。(それまでの輸送艦は艦自体が浜辺に接岸して艦首から揚陸させていた。)

 陸上自衛隊の90式戦車10両と完全武装の揚陸部隊330名の輸送能力があり、大型ヘリコプターやLCACを用いた迅速かつ三次元的な揚陸作戦が遂行可能になっている。

 外観上は長く平坦な甲板を有する空母船体が特徴。その形ゆえ、1番艦『おお 

すみ』竣工時は、軍事知識を全く持たない一部マスコミ記者や(自称)平和活動家などから「空母だ!」と騒がれたことがあった。

実際に乗艦して甲板に出れば、ジェット戦闘機の離発着が不可能な甲板であることは一目瞭然である。

 『おおすみ』型の甲板は前部が車両甲板、後部がヘリコプター発着甲板となっている。発着スポットは2カ所あるが、ヘリについては上甲板全面に発着が可能となっている。ただしヘリコプターは格納できても数機だけであり、そもそもヘリコプターの整備機能はない。

 艦内には移送する陸自隊員用として330名分の居住施設がある。ここは災害派遣時には避難した人達の宿泊施設にもなるほか、足りなくなった場合は艦内の車輌格納庫内も宿泊施設となるそうだ。手術室などの医療設備も充実しているので、災害派遣時には洋上基地としての活用が期待されている。

 『くにさき』は、2004年(平16年)12月末に起こったスマトラ島沖の地震と津波による救援活動で、陸自の輸送ヘリ5機と車輌を積んで現地に出航。(UH60型ヘリ2機はローターを外して 車両甲板に収納。CH47型ヘリ3機は大きすぎて収納出来ないため、防錆シートで覆って甲板に固定していた。) 現地では『くにさき』を拠点にして、LCACとヘリを用いての災害救助活動が行われている。

 つい最近では、2007年(平19年)7月16日に発生した”新潟県中越沖地震”の際に、四国沖での訓練を中止し呉に帰港。援助物資を積み込み柏崎港に急行。7月19日に柏崎市海浜公園において、LCACを用いた援助物資の卸下作業が実施。また21日に渡って給水支援が行われ、20日・21日と車両甲板内に設けられた特設の入浴設備を一般に開放し入浴支援を行っている。支援は23日に掃海母船『うらが』に任務が引き継がれるまで行われた。

 同型艦として『くにさき』(LST4001)、『しもきた』(LST4002)が竣工しており、3隻で第1輸送隊を編成している。

●『くにさき』Data

 基準排水量:8900t/満水排水量:14000t

 全長:178m/全幅:25.8m

 機関:ディーゼル2基2軸/出力:26400ps

 速力:22ノット

 乗員:135名

 武装:高性能20mm機関砲(CIWS)2基/チャフ装置6連装4基

 輸送用エアクッション艇(LCAC)2艇搭載

 竣工:2003年(平15年)2月26日/建造:日立舞鶴/所属:護衛艦隊第1輸送隊/母港:呉

■外観

 

 

 遠くから見ると平坦で長い甲板を持つ『くにさき』が空母のように見えます。『くにさき』というか『おおすみ』型輸送船の外見上の特徴がこの空母船体。(空母ではありません。) 艦橋前の前部甲板が車両甲板で、後部がヘリコプター発着甲板となっています。ヘリコプターについては全甲板に発着できるようになっていますが、任務の 性質上当然でしょう。

 ちなみに写真ですが、展示訓練を終えて大阪港中央突堤に戻り艦を下りた後に撮影しています。クレーンが稼働している姿を撮した珍しい写真になりました。桜島と天保山を結ぶ渡船の乗り場(桜島側)から撮影しています。

 8月5日の朝、『くにさき』に乗艦する前に撮影した写真。艦橋は艦の右舷側に位置しています。岸壁から見ると艦橋は意外と高く、ビルの4〜5階ぐらいの位置にあるようです。マストには各種アンテナとレーダー。煙突には竹のようなアンテナが設置されています。さらに艦橋前の甲板室上にはR2D2のようなCIWSが鎮座。『くにさき』の自衛用の兵装です。

艦中央部から艦尾方向を見る。LCACの他に作業艇も搭載しています。

岸壁上から艦橋を見上げます。各種レーダーとア

ンテナが。手前の白いR2D2見たいのはCIWS。

舷側のサイドドアが開き、サイドランプが出ていま

す。ここから車両甲板に出入りします。

■車両甲板

 サイドドアから艦内に入ると、そこは車両甲板となっています。かなり広い車両甲板で、ここに陸上自衛隊の戦車や各車両などを収納することになります。広さは約2190平方メートル。一坪が約3.3平方メートルなんで約664坪となりますな。

 

 

 サイドドア付近から艦首方向。イベントのため椅子が並べられモニターが映し出されていますが、この付近にエレベータが下りてきます。収納しきれない車両などは甲板上に搭載されることになっています。床に見える丸い白円はターンテーブルです。

 2007年の新潟県中越沖地震の際には、船首部分の車両甲板上に特設の入浴施設が設けられたとのこと。

 

 

 艦尾方向を見ます。広い車両甲板です。あまりに広いので運動場としても用いられるとか。左端にバスケットゴールがありますね。さすがにサッカーゴールはなかったです。 甲板ですが、90式戦車に対応した甲板強度を持っているそうです。

 奥に見える仕切から先がLCACを収容するウエル・ドックだそうで。LCAC5号艇と6号艇が収容されていました。その手前にいるのが甲板内作業車。後部のエレベータはその向かい(右舷側)にあります。

■ウエル・ドック

 車両甲板の艦尾側に設けられたのが「ウエル・ドック」と呼ばれるLCAC収容エリア。ここにLCACを2隻収容することができます。幅約15m、長さ約60mとなっており、LCACは艦尾にある門扉から出入りします。『くにさき』などの母船が航行中であっても発進・収容が可能となっています。

 

 

 ウエル・ドック内部。とは言ってもLCAC5号艇と6号艇収容されていたので、LCACの甲板上から艦首方向を撮影しています。

一段上がっただけで一続きの甲板と見えないこともないです。

 

 

 LCACの収容の様子を車両甲板から見た光景です。乗艦した『くにさき』でのみ見ることができました。逆光状態ですが、ウエルドックに乗り上げた(?)LCACと、普段は見ることのできないドックないの側壁と天井が見えています。仕切付近から10mほど艦首側に立って撮影していたのですが、そこにまで水滴が飛ばされて来ていました。

 この後、一旦ドック内に止まってから再度発進して行きました。

■上甲板

 上甲板は船首寄りの車両甲板と船尾寄りのヘリコプター発着甲板から構成されています。広さは上甲板だけで約3600平方メートル(約1090坪)もあるそうな。広いです。

 ヘリコプターは発着できますが、護衛艦(DDHや一部のDDなど)のようにヘリ格納庫はありません。格納する場合は車両甲板に下ろすことになります。そのエレベータは前後に2基設置されています。ヘリコプターも載せて運搬できるようですが、大きさに限界があるために格納するヘリは限定され、なおかつ格納するに際してもローターブレードを外さないとだめなようです。

 

 

 艦橋後部からヘリコプター発着甲板を見ます。○と×で描かれているのがヘリコプター発着場。2機の運用が可能になっていますが、車両甲板上にも発着が可能となっています。 ちなみに右隅に鎮座しているR2D2みたいなのは後部のCIWSです。

 以前、リンク先の掲示板に、『おおすみ』のヘリコプター発着甲板に着陸するシーハリアーの写真(もちろん合成)を掲載して、

「『おおすみ』は輸送艦ではなく空母だ!これがその証拠だ!!」と騒いだ香具師がおりました。発着甲板は鋼製ですが、ジェットエンジンの熱がまともに当たると溶けてしまうそうです。空母の飛行甲板は特殊な鋼材で作られていることを知らなかったようで、皆から失笑を買っておりました。┐(´д`)┌

 

 

 閑話休題。ヘリコプター発着甲板から艦首方向を見ます。こう見るとかなり広く見えます。艦の全幅が25.8mで、ギリギリまで甲板を広げています。展示訓練時は何度も甲板を歩きましたが、歩くと意外と広いことが分かります。

 艦首よりの発着場から撮影していますが、この下には居住区、さらにその下にはウエル・ドックがあります。飛行甲板の真下に居住区がある時点で空母失格ですなわな。

 

 

 艦首よりの車両甲板です。電柱のような柱の付近を始め、甲板に等間隔で黒い穴が空いています。これは甲板上に搭載した車両などを固定するフックを架けるものです。 電柱のような柱の斜め前方、四角形の枠が前部のエレベーター。車両甲板に車両などを下ろします。 車両甲板にあった椅子が並べられた区域は、ちょうどこの真下付近となります。

 

 

 船内にあった写真パネルを撮影したもの。2004年(平16年)末のスマトラ沖地震の救援活動時の一コマでしょう。前のエレベータで陸自ヘリ(UH60)を車両甲板に下ろそうとしています。UH60の大きさでギリギリなようで、ローターブレードは取り外されています。尾部のローターもギリギリという状態。これでどうにか下ろせたというこうとでしょう。海自のSH60Jならここまでしなくても大丈夫なのでしょうか?

 写真では隣にCH47が同じくローターブレードを外され、防錆シートをかけられて甲板上で固定されています。艦橋横には陸自車両が同じく甲板に固定しているのが見えます。こういう形で車両などを運搬するのでしょう。

■兵装

 『おおすみ』型輸送艦には輸送艦でありながら兵装が施されています。とは言っても護衛艦のような速射砲や対潜兵器などは搭載しておらず、あくまでも自衛用の兵器として高性能20ミリ機関砲(CIWS)を2機搭載しています。艦橋の前後に鎮座しているR2D2のようなのがCIWSです。

 CIWSは対ミサイル用の機関砲で、レーダーで目標を探知すると、最も危険な目標を自動選定して追尾レーダーで自動追跡。自艦までの距離が約2kmとなると射撃を開始します。レーダーからのデータをもとに誤差を修正して追尾・射撃を続け、目標が破壊されると次の目標を自動的に探し出し攻撃するという優れもの。欠点はありますが、水上艦艇にはなくてはならない兵器です。 

 LCACも搭載兵装ということになりますが、LCACは別項で説明します。

海上自衛艦にはお馴染みの兵装ともいうべきCIWS。輸送艦にも装備され

ています。

何艦もの自衛艦で見てきましたが、実際に動くのを見たのは初めてでした。

ロボットみたいなギクシャクした動きでした。

 機関銃類も当然装備されていますが、自衛艦では固定装備ではなく搭載品として扱われているそうです。展示訓練時は搭載されている実銃(もちろん実弾は装填していません)が4機種展示されていました。

12.7mm銃機関銃の架台。同機関銃は見ていま

せん。

搭載銃の1つ、64式7.62mm小銃。

 

56mm機関銃。他に2機種展示されていました。

 

■艦内

 展示公開の間、非公開・立入禁止の区域・部屋以外は艦内を自由にウロウロすることができました。艦橋にも出入り自由。真剣に繰艦している最中に艦橋にお邪魔したりしていました。(さすがに声はかけることはできなかったです。)

 公開エリアは「車両甲板〜食堂〜上甲板〜艦橋」の4カ所と一部通路ぐらいだったので、ここを何度も行き来してました。居住施設は撮り損ねました。m(_ _)m 『おおすみ』のレポをご覧下さい。

出港時の艦橋。緊張感がありました。こんなに人

が居たんですね。

こちらは機関制御室。ここからも何やら指令を出し

ていました。

食堂。艦橋とは違い、マターリした空気が流れて

いました。

■『くにさき』いろいろ

 艦内をウロウロしているときに撮影した写真です。

『くにさき』のマスコットシンボルである、『木菟(み

みずく)』のモニュメントが車両甲板にありました。

食堂横の廊下にある食器返却口でしょう。食堂内

に返却口はなかったような気がします。

食卓番より陸自隊員へのお願いのポスター。海自

で陸自隊員と接する機会がもっとも多そうです。

酒保。艦内売店ということですね。他にも自販機

が置いてありました。

搭載されていたボート。救助とか停泊時における

艦周辺の警備に使用されるようです。

CIWSの横にあった消化機。ヘリ発着時に稼働

します。 柵が倒され稼働状態にあります。

【終わり】

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